こんにちは。南青山クロンヌウォッチコンシェルジュ阿部です。
さて今回は複雑機構第3弾として「ミニッツリピーター」をご紹介させていただきます。
皆様がミニッツリピーターと聞いたとき漠然と「音が鳴る時計」
と言った認識の方が多いのではないでしょうか。
今回はその機構の成り立ちと腕時計への昇華の過程を紹介していきます。
〈成り立ち〉
現代のように電球による明かりが発明されていない中世では、暗くなると時計の文字盤が見えなくなり、時間の把握が容易ではありませんでした。
ろうそくやランプの明かりでは文字が認識しにくい為、当時の時計(置時計)に音による時打ち機能をつける事により
夜の時間帯を知る手段を得ました。
※ 柱時計を想像していただければと思います。
・柱時計(1時間ごと)→置時計(人為操作で任意の時間)→懐中時計(携帯可能に小型化)
→機械式腕時計(更に小型化)→クォーツ(電子回路)
と出来得る極限まで薄型・小型化しています。
〈進化〉
中でも今回取り上げているのは、機械式腕時計の時打ち機能です。
17世紀後半に時打ちの置時計が登場します。
スイッチを押すと、時計の駆動とは別のゼンマイを使って
ハンマーを動かし、ゴング叩きその回数によって時を知る仕組みです。
それから18世紀の1783年、アラン=ルイ・ブレゲがこの機構を小型化し
初めて懐中時計に組み込むことに成功しました。
仕組みも現代のものと変わらず、ほぼ完成と言えるものです。
ハンマーで打つ鐘を板状のゴングに作り替え省スペース化を図りました。
ムーブメントをグルっと取り巻くように設置されたゴングは
長さと太さを変える事で高音・低音と違う音色を作り出しました。
夜中や暗い場所で文字盤や時分針が見えずともその時の時間が
瞬時に確認出来るという画期的な発明でした。
〈そして腕時計へ〉
ブレゲの大発明から約100年後の
1891年に三大ブランドの一つ「オーデマ・ピゲ」により
腕時計サイズに小型化したミニッツリピーター付きムーブメントを開発し、
翌年には世界初となる腕時計のミニッツリピーターを発表しました。
その後、電気が一般に普及し暗闇の無くなった時代になっても
機械式の時計メーカーにとって甚大な被害を与えた
クォーツショック(1969年~)を経た現在でもなお、
人々を魅了する複雑機構の一つとして確かに継承され続けています。
もはや機械式腕時計は「正確な時を知るもの」よりもっと他の
例えば、ステータスの象徴であったり高価な装飾品の要素が強くなってきています。
しかしそうなることで、精度を追求するための素材や機構の開発とは別に
エンターテインメントとしての
ギミック要素の開発と技術革新にも方向性が向いてきています。
それはクォーツショックで衰退しかけた機械式腕時計メーカーが捨て鉢にならず
脈々と継承してきた時計技術の結晶であり
この先の機械式時計の明るい未来を示しているとも言えます。
数百年前に考え出された機構が現代の技術で更に昇華され蘇る、
まさに「温故知新」です。
毎年この時期になると時計の新作発表の知らせに心が躍ります。
来年の2020年からはバーゼルワールドとSIHHが同時期に開催されるようです。
期待しましょう。
最後に当店で販売実績のある
オーデマピゲ・ロイヤルオーク・グランドコンプリケーション
のミニッツリピーターの音色をお楽しみ下さい。
~次回予告~
【ミニッツリピーター編2】
その仕組みと種類について
・グランソヌリ
・プティソヌリ
・デイトリピーター
それぞれの違いについて詳しくお伝えいたします。
アラームなど他の鳴り物もご紹介いたします。